2025.11.17

245.100点の理想を胸に挑んだ、攻める構成の光と影(第79回全日本体操団体選手権)


大会2週間前の試技会で叩き出した 245.100点。
その“理想のライン”を胸に、ジュンスポーツ北海道は高崎アリーナの舞台へ向かった。

2025年11月14日。
6名の選手たちは、攻める構成を選び、全国の強豪と向き合った。

しかし、この日の団体戦は、
光と影が交錯する、濃密な3時間となる。

ここでは、その時間を種目ごとに辿り直す。

ゆか(出場:金子・青木・前田)― 流れをつかみかけた、その先に揺れがあった。

団体戦の入りはゆか。
金子の安定した着地、前田の勢いある動き。
チームは滑り出しのリズムをつかんだように見えた。

だが、青木が冒頭の“屈伸ダブル”で尻もち。
攻めの構成がわずかな乱れとなり姿を現す。

それでも青木はその後を丁寧にまとめ、12.700。
まだ、理想のラインは遠くなかった。

あん馬(出場:中川・前田・長﨑)― 中川の会心、前田の粘り、そして長﨑が空気を変えた。

あん馬は、団体戦の心臓とも呼ばれる種目だ。

1番手・中川が 13.800 の高得点。
緊張した空気を断ち切るような安定感があった。

前田は危うい局面を必死にこらえ、12.233。
点数以上に“つなぎ”の価値を持つ演技だった。

そして長﨑柊人。
旋回の伸び、体線の美しさ、静寂に落ちる着地。
そのすべてが観客を引き込んだ。

14.833(あん馬1位)。
チームの空気が、再び前を向いた瞬間だった。

つり輪(出場:金子・前田・青木)― 痛みとの戦いの中で、全員が“立つ”。

金子は肩の痛みを抱えていた。
本来の力を出し切れず、12.666。

それでも、3名全員が SB(スティックボーナス) を獲得した。
大きく崩れず、わずかな灯火を守るように立ち続けた。

「まだ巻き返せる」
そんな気配が確かにあった。


跳馬(出場:前田・青木・中川)― 理想から最も遠ざかった、ふたつの転倒。

跳馬は勢いを取り戻すチャンスだった。

しかし、競技とはいつも残酷だ。
青木が転倒、中川も転倒。
わずかなズレが、着地の乱れへとつながった。

245.100点の理想が、遠ざかっていく。
チームの空気が一瞬だけ揺れた。


平行棒(出場:豊澤・青木・前田)― 盛り返しの糸口を探したが、つかみきれず。

1番手・豊澤が SB。
正確な技で、流れを引き戻そうとした。

だが青木は、終末技でバーに脚が触れて転倒。
痛恨のミスだった。

前田は崩れずまとめたが、
大きなうねりを作るまでには至らなかった。


鉄棒(出場:前田・豊澤・青木)― 中川の故障。急遽6種目目へ。

最後の最後まで“攻め”を選んだ。
本来の1番手は中川だった。
しかし跳馬の着地で脚を痛め、まさかの欠場。

突然、前田が 6種目すべて を担うことになった。
精神的にも肉体的にも負荷の大きい選択だった。

それでも彼は落下を避け、
チームを守る演技をやり切った。

豊澤はペガンを成功。
しかしカッシーナで落下。
攻めた構成ゆえの悔しさだった。

最終演技者・青木は 13.633(SB獲得)。
意地と責任を背負った、重い一本だった。


結果:237.494点(10位)

試技会での 245.100点 には届かなかった。
数字だけを見れば、決して満足できる順位ではない。

しかし、この日の3時間には、
数字では測れない“厚み”があった。


― 攻めることを選んだからこそ、見えた景色がある。
青木は今季、ハムストリング痛で十分な練習量を確保できず、
前田には急遽6種目の重責がのしかかった。
中川は試合中に故障。
構成も負担も、大きい布陣だった。

それでも――
誰ひとり逃げなかった。

攻め続けたからこそ見えた、課題と収穫。
苦さの中に、確かに光がある。

ジュンスポーツ北海道は、
**痛みも、学びも、経験も──すべてを来季の力に変える。
“Stronger than past.” その言葉を胸に、北から、もう一度挑む。**
2026年、さらに強いチームとして戻ってくる。

バランス感覚と体幹を育てる ― スラックレール