2025.9.11

孤独な舞台に立つ勇気 ― 長﨑柊人、あん馬で刻んだ悔しさ


全日本シニアを終えた夜、ジュンスポーツ北海道のメンバーは笑顔で打ち上げに集った。
その輪の中に長﨑柊人の姿もあった。
だが彼は、心の奥で静かに距離を置いていた。
翌日に控える「男子体操種目別メダリスト選手権」。
仲間と喜びを分かち合いながらも、気持ちを切らすことなく、自らを律していた。

会場の静寂と緊張感


9月7日、エスフォルタアリーナ八王子。
この舞台では、同時進行の団体戦とは違い、フロアに立つのは常に一人の選手だけ。
会場全体の視線が、今この瞬間、ただ一人に注がれる。
演技前の静寂は、鼓動の音すら聞こえるほど。

チームメンバーも観客席から固唾をのんで見守る中、長﨑はあん馬の前に立った。
仲間の声援は背中を押すが、最終的に馬の上で戦うのは自分ひとり。
孤独と緊張感が、否応なく彼を包み込む。

ひとりの演技、観衆の拍手


旋回、移動、そして下りへ。
わずかなミスも許されない舞台で、長﨑は全身の神経を集中させた。
観客の視線と静寂が重圧となり、同時に力へと変わる。
最後の着地が決まった瞬間、場内から拍手が湧き上がった。

結果は3位。
惜しくも頂点には届かなかったが、確かな存在感を刻んだ。

次への誓い


団体の喜びの輪から距離を置き、孤独な翌日を戦い抜いた長﨑。
その胸に残ったのは、孤独感ではなく「悔しさ」だった。

「次は必ず」――。
11月の全日本種目別選手権。
再びあん馬に挑む彼の視線は、すでに前を向いている。


長﨑柊人。
仲間に支えられ、観衆に見守られながら、
孤独な舞台で自らを試す。
その物語は、まだ続いていく。